
育成就労(技能実習に代わる新しい制度)や特定技能で、ベトナム人の採用が決まったあと、多くの担当者が迷うのが「来日までに、日本語をどこまで準備してもらえばよいか」です。結論から言うと、来日前の数か月は、試験の点数を上げることよりも「仕事と生活で最初に困る場面の日本語」に絞り、母国語で説明できる先生とオンラインで学び続けてもらうのが近道です。この記事では、その理由と、具体的な準備の順番をまとめます。
育成就労・特定技能で来日する前に日本語を準備すると、入社後に何が変わるか
入社してすぐの数週間は、仕事の手順、安全の決まり、寮や役所の手続きなど、覚えることが一度に押し寄せます。このとき日本語の聞き取りがほとんどできないと、指示のたびに通訳や身ぶりが必要になり、本人も周りも疲れてしまいます。
来日前に、あいさつ・数字・時間・「わかりました」「もう一度お願いします」のような確認の言葉が身についているだけで、最初の説明が伝わりやすくなります。分からないときに「分からない」と言えることは、安全の面でも大切です。準備の目的は、完ぺきな日本語ではなく「困ったときに、自分から聞ける状態」で来日してもらうことです。
また、来日前から会社の人と日本語で短いやり取りをしておくと、本人の不安が小さくなります。知らない国で働き始める緊張は大きいものです。「この会社の人とは、少し話せた」という経験が、入社直後の落ち着きにつながります。
ベトナム人がつまずきやすい日本語のポイント

学ぶ人によって差はありますが、ベトナム語を母語とする人が日本語で苦労しやすい点は、ある程度決まっています。先に知っておくと、来日前の学び方や、入社後の声かけを工夫できます。
- 音の長さと小さい「っ」:「おばさん」と「おばあさん」、「きて」と「きって」のように、長さや詰まる音で意味が変わる言葉は、聞き分けも言い分けも練習が要ります。
- 漢字:ベトナム語はアルファベットで書くため、漢字は一から覚えることになります。一方で、漢字語の中にはベトナム語の漢越語と音や意味が近いものがあり、つながりに気づくと覚えやすくなります。
- 助詞と敬語:「は」と「が」、「に」と「で」の使い分けや、職場で使う丁寧な言い方は、ことばの説明を母国語で聞けると理解が早くなります。
どれも、日本語だけで説明されると分かりにくい部分です。説明だけは母国語で受けられると、つまずきが減ります。
入社後の声かけでも工夫ができます。指示は短い文で一つずつ伝え、数字や時間は紙やホワイトボードにも書くと、聞き取りの負担が軽くなります。「分かりましたか」と聞くより、「何をしますか」と本人に言ってもらうと、伝わったかどうかを確かめやすくなります。
来日前に優先して身につけてもらいたい日本語の場面
時間は限られているので、場面ごとに優先順位を付けて学んでもらいます。次の順番で進めると、来日してすぐに役立つ言葉から身につきます。
- あいさつと名前・国・年れいの自己紹介
- 数字・時間・曜日・日付(勤務の時刻や集合の時間を聞き取るため)
- 確認とお願いの言葉(「もう一度お願いします」「これでいいですか」)
- 安全の言葉(「危ない」「止めて」「けがをしました」など、職場で必ず使うもの)
- 生活の言葉(買い物、病院、ごみの出し方、交通)
たとえば工場や建設の現場なら、道具や機械の名前、「右・左・上・下」、「〜してください」「〜しないでください」の形を早めに覚えてもらうと、最初の研修が進めやすくなります。介護や接客の仕事なら、相手を気づかう短い言葉や、丁寧な言い方の基本が先になります。職場で実際に使う言葉の一覧を会社から渡しておくと、学ぶ内容がはっきりして、本人も目標を持ちやすくなります。
この順番で学んだあと、余裕があれば日本語能力試験(JLPT)のN5・N4の範囲へ広げていきます。QPIDでは、JLPTの形式の問題を、ベトナム語の解説つきで練習できます。日本語の先生向けの解説は、JLPTの問題と教え方の解説の一覧にまとめています。
オンラインで日本語の学習を続けてもらう方法

内定から来日まではベトナムにいるため、学びを続けてもらうにはオンラインが現実的です。続けてもらうためのポイントは3つです。
- 説明は母国語で受けられるようにする:分からないところをベトナム語で質問できると、途中でやめにくくなります。
- 一人にしない:同じ時期に来日する仲間や、先に日本で働いている先輩と一緒に学べると、続けやすくなります。少人数のグループで受けられる授業は、費用の面でも続けやすい方法です。
- 短い時間を毎日:仕事や準備の合間に、1日15分ほどの練習を続けてもらうほうが、週末にまとめて学ぶより身につきます。
会社の側でできることもあります。月に一度、内定者とオンラインで短く話す時間を作り、覚えた日本語で自己紹介や近況を話してもらうと、学びの成果が見え、来日後の顔合わせも自然になります。
QPIDは、「教える言語」と「説明する言語」の組み合わせで先生を探せるオンラインの日本語学習の場です。日本語をベトナム語で説明できる先生を、講師の一覧から探せます。内定者には、ベトナム語の画面でQPIDに無料で登録(1分)してもらえば、来日前から先生や仲間と日本語を学び始められます。1対1のほか、最大5人のグループレッスンもあり、掲示板やメッセージで同じ国の仲間と質問し合うこともできます。
制度で求められる日本語の水準は公式の情報で確かめる
技能実習に代わる「育成就労制度」は、厚生労働省の案内によると、2027年4月1日に施行される予定です。出入国在留管理庁と厚生労働省の資料では、育成就労から特定技能1号へ移るときには、技能の試験に加えて、日本語能力A2相当以上(JLPTのN4など)の試験への合格が求められると示されています。
一方で、働き始めるときに求める日本語の水準や、分野ごとの上乗せは、運用の資料で細かく定められ、見直しも続いています。採用の計画を立てるときは、必ず出入国在留管理庁の最新の資料(育成就労制度の運用要領など)で確かめてください。どの水準が求められる場合でも、来日前から日本語を学び続けてもらうことは、本人の将来の選択肢を広げることにつながります。
来日前の日本語の準備をどう進めるか迷ったら、まずは小さく始めて、内定者の様子を見ながら調整するのがおすすめです。内定者に始めてもらうときは、ベトナム語の登録ページを案内してください。ベトナム語で説明できる先生とのオンラインの授業や、内定者向けのグループでの学び方について知りたいときは、お問い合わせから気軽にご相談ください。